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Penguin Random House The Remains of the Day: Booker Prize Winner 1989
著者: Ishiguro, Kazuo(著)
販売元: Faber & Faber
発売日: 2010年04月01日
種別: マスマーケット
価格: ¥2,213
在庫: 在庫あり。
ページ数: 272ページ
Classics: 365位
Biographical: 25位
Literary: 488位

多読国民のレビュー

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2019/07/16 By つばめ (評価:-- / ジャンル:CO / YL:0.0 / 語数:69,684)
2016/05/13 By Miki (評価:5点 / ジャンル:LV / YL:8.5 / 語数:70,103)
At first it was boring and I didn't see the point.
But once I realized that Mr Stevens, the protagonist was a kind of "unreliable narrator", it suddenly became interesting.
At the last chapter, I again realized that this was a true love story.

【注:以下ネタバレあり】


老執事が一人語りで古き良き英国を振り返る話…ではなかった!
これは純愛物語ですよ。老いぼれて、30年も前の淡い恋を探して(とはもちろん一言も言わないが)旅に出る。
旅の途中であれやこれやと自分の仕事を誇らしく(しかも肝心の旅の描写よりもうんとページ数を割いてしつこく)回顧するけれども、これは私は主人公の老執事スティーブンスがこの期に及んでまだ自分の恋心に蓋をしている様を表していると読みました。この回顧シーンが非常に長くて苦痛。特にダーリントン卿の政治がらみの話。でもミス・ケントンとのやりとりは楽しめたけれど。

4日目の最後のあたりでおや!という決定的シーンがあり、なぜか5日目がなくて6日目が最終章。
ミス・ケントン(今は嫁いでミセス・ベン)と再会は果たすものの、最後まで口づけどころか指一本触れないまま、それぞれの道を歩んでいくのです。ああなんという結末!バスで帰るというミセス・ベンを、バスが来るまで雨の中をバス停で一緒に待ってあげる一幕は、静かで美しくて、とても印象的でした。

タイトルの”the remains of the day” の両義的意味について考えました。
邦訳では土屋政雄さんが『日の名残り』という美しい邦題をつけています。
the remains =残骸、残り物 という意味では、「自分の人生の残骸」後ろ向きな見方。
本文中(p256)に出てくる"try to make the best of what remains of my day" と考えれば、「残りの人生」つまり前向きな見方。旅の途中ではずっと過去を振り返っている(しかもネガティブなことはオブラートに包んだり解釈を変えたりしてすべて良きこととして回顧される)スティーブンスが、ミス・ケントンと会い、自分の彼女への気持ちを初めて認めて、旅の最後、海辺の町で出会った老人との何気ない会話の中で前向きになるところで終わっているのです。つまり、タイトルの両義性がちゃんと小説に入れ込まれている。なんと秀逸なタイトル!!

正直、最初はスティーブンスが自慢ばかりするし偏屈だし退屈で死ぬかと思いましたが(途中まで☆2かなと思ってました)、途中で「信頼できない語り手」だと気づいてからだんだん面白くなり、ラストはじーんとなりました。
カズオ・イシグロが35歳の若さでこのいぶし銀のような渋い小説を書いたという事実にも驚きです。

いわゆるページターナーの、読んでいる最中はワクワク気分だけど読み終えた瞬間に内容を忘れてるような大衆小説とは違って、読んでいるときはよくわからなくても、読み終わって時間がたってからじわじわくる感じ、まるでスルメのような小説でありました。(褒め言葉)

【英語について】
カズオ・イシグロの文は読みやすいと聞いていましたが、(おそらく執事特有の)もったいぶった言い回し、微妙な空気感、行間を読むような箇所もあるため、あまり読みやすくはありませんでした。邦訳を併読しました。

Lexile® 1210L
Word Count: 70,103
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